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ビートルズってロシア人? Episode 3

d9f92990.jpg 前回僕は、

(1)「Ob-La-Di Ob-La-Daはフォークダンスナンバーである」
(2)「フォークダンスナンバーを作るのはロシア人である」
(3)「ゆえに、ビートルズはロシア人である」

という、とても中学1年生とは思えない理路整然とした三段論法によって、ビートルズをロシア人であると決めつけている。

 また、前々回僕は、「『よし、ビートルズを聞こう』と意識して聞いた最初のナンバーはCome Togetherだった」と述べ、それが「自分が予想していたビートルズサウンドとはかけ離れていた」とのたまわっているが、これでは、Come Togetherがフォークダンスっぽくないために「自分の予想とはかけ離れていた」と僕が感じたかのように思われてしまうが、実はそうではない。

 「ビートルズ=ロシア人」という僕の誤った歴史観を正してくれたのは、何を隠そう、我が家で鼻の穴をパフパフさせていた例の友人である。同時に僕は、やはりその彼によって、Ob-La-Di,Ob-La-Da以前に少なくとも2曲、ビートルズナンバーを聞いていたことを知る。

 その1曲はPlease Please Me(「Come on!(Come on!)Come on!(Come on!)Come on!(Come on!)Come on!(Come on!)」というおなじみの曲です)。
 「おい、大村。三ツ矢サイダーの宣伝の後ろで流れてるのはビートルズの曲だぞ(CMやBGMなどという洒落た単語は、当時の鼻の穴の辞書にはまだなかった)」

 そしてもう1曲はShe Loves You(「She loves you yea!yea!yea!」というおなじみの曲です)。

 今ではちょっと考えにくいが、当時は「フィルムコンサート」なる催しが結構盛んで、呼んでも来てくれそうにない大物ミュージシャンのコンサートフィルムをみんなで楽しもうという企画があちこちで行われており、そのビートルズ・フィルムコンサートのテレビCMのBGMがShe Loves Youであった(リンゴ・スターなら、「大ホールですよ!」とでも説得すれば、静岡市民会館に来てくれたかもしれないが(笑)。

 この2曲がいたく気に入っていた僕は、少し腰を据えてビートルズを聞いてみたくなり、鼻の穴にビートルズのレコード持参で遊びに来るようお願いをする。

 今にして思うと、この「お願い」がいけなかったのか。後にも先にも人にお願いなどされたことのない鼻の穴をすっかり舞い上がらせてしまったのだから。「間違ったかも知れない」の一言を残して『Abbey Road』と爆死する羽目となった彼には少し気の毒なことをした。

 あと、ここで1つ大切なことを補足しなければならない。僕がCome Togetherを聞いて「これは違うぞ」と思ったのは、それが、Ob-La-Di,Ob-La-Daとは異質であったからではなく、快活なPlease Please MeやShe Loves Youとは異質であったためである(随分と遠回りをしたが、やっと話が振り出しに戻ってくれた)。

 ところがこの鼻の穴、なんのなんの、そんなことでめげるような男ではなかった。ある土曜日、「今日部活が終わったらこのLPを聞こう」と2枚のLPを持参で登校してきた。

 実のところ、当時の僕の中学は結構「持ち物」に厳しくて、勉学に関係ない物の校内への持ち込みは言語道断みたいな雰囲気があった。また、そのことで先生が生徒に手を上げることも珍しくなかったが、しかしそれも、当時の僕達には「愛のむち」であった(これは皮肉ではなく、僕は真面目にそう思っている)。

 たとえば、コミック1冊かばんに忍ばせるだけで、今風に言えば、女の子が淡いピンクの口紅をして登校するぐらいの勇気がいった時代である。そんな時代に、2枚組みのLPを2セット校内に持ち込んでみんなに堂々と見せびらかすのだから、これも今風に言えば、まじめな学級委員の女の子が、ある日突然黒髪をピンクに染めて、鼻にはピアスのいでたちで登校してきたようなものである。

 相当に彼は、我が家で鼻の穴をパフパフさせたのが悔しかったとみえる。

 何を大げさなと思われるかもしれないが、LPを校内に持ち込むのは、本当にそれほど危険極まりない行為だったのだ。

 さぁ、鼻の穴の身に何が起きたのか。先生に見つかって鉄拳でも食らったのか。それはまたのお話。