ギリシア人の友人
麻布に隠れ家的なバーがある。行った人でなければ見つけられない地下のバー。しかも、会員制ではないが、入口にインターフォンがあり、そこで名前を告げて承認されないと中に入れてもらえない。
このバーに、しばらく行っていなかったが、「21日の金曜日に行かない?」と、実は友人の林葉直子さんに電話をもらっていた。しかし、その後、直子さんがどうしても自分のお店を空けられなくなり、「じゃあ、どうせ暇になっちゃったし、金曜日は僕が直子さんの店に行くよ」と予定が変更になる。
そこで、どうせなら友人を誘おうと思い、ブログ『素敵な2人』で登場したオージーのDさんを紹介してくれた友人のKさん(この人は日本人)に声をかけた。そうしたら、彼は、直子さんの店にギリシア人の友人のSを連れてきた。来日してたったの4ヵ月。当然にして、日本語はまったくわからない。
その上、彼は、「将棋」というゲームの存在も知らず、当然にして、直子さんのこともまったく知らない。
そんな状況の中で、直子さんの意に反して、その日は客は僕達しかない貸切状態だったので、お店で働くネパール人の女性も参加して、全員が母国語ではない英語で会話した。
英語圏の人と話すときには感じないが、日本人、ギリシア人、ネパール人が意思の疎通が図れてしまう英語ってやっぱりすごいと、こうしたシチュエーションになるといつも思う。
直子さんが、ボキャブラリーとヒアリングはあるが、英語の文章の組み立てが若干苦手ということで、僕たち日本人2人が、ギリシア人のSに、将棋のことや、直子さんのことを話す。彼は、それはもう興味津々。彼女がちょっと席を外すたびに
「She's so beautiful!」
「I bet her father must be an Italian」(違います、Sさん。彼女はこてこての日本人です(^_^;)
と僕たちに耳打ちをする。
そして、
「そんなに偉大なら、直子さんの英語の伝記を読みたい」
「英語の文献はないよ。たとえ日本文でも、散乱した情報を集めなければダメだよ。伝記はないよ」
「じゃあ、あつし、君が作ってくれよ」
こんな会話の繰り返し。そして、Sは僕としては聞かれたくない決定的な質問をした。
「10年もタイトルホルダーだったほど強いのに、なぜ将棋界を引退したんだ?」
「・・・」←僕
「・・・」←Kさん
上述のとおり、ヒアリングは大丈夫な直子さんは、Sの質問を理解し、「Sさんに話しちゃっていいよ」とくったくなく笑う。
まあ、本人の許可が下りたので、数年前の事件をかいつまんで話したが、Sは、あまり気に留めた様子はない。それよりも、直子さんが将棋界を引退し、こうしてお店にいるために、今後も会える事を非常に喜んでいる。
その後、飲み足りない、ということで、3人で、六本木のケントスというライブハウスに移動。50's、60'sの音楽を楽しむには最高の店だ。時々、『Stand By Me』のベン・E・キングや、『Only You』『Smoke Gets In Your Eyes(煙が目にしみる)』のプラターズ本人が出演するほどの店である。
遠距離通勤のKさんは先に帰宅し、六本木からタクシーで5分。同じ町内に住むSと僕だけで、その後、もう1ステージを楽しんで帰途に着く。そのタクシーの中でも、さかんに直子さんのことを気にかけるS。
ちなみに、Sは、国籍はギリシアだが、ベルギーのロイアルファミリーの末裔で、両親はともにEUの主要官僚というセレブ。もし、僕が直子さんとSのキューピッドにでもなったら、杉田かおるのように週刊誌を賑わすのだろうか(笑)
いずれにせよ、「来週の金曜日にまた直子さんと会いたい」とSが言うので、これはセッティングしてやらなければならないなと、電話番号を交換してSと別れた。
また、素敵な友人が1人増えた夜。
