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2007年02月27日

「篤」が「あつし」に変わるまで(5)

< 第1話 からお読みください >

主要登場人物・団体

●僕・・・この物語の主人公。わたくし、大村あつしのこと。
●福島一郎・・・謎の人物。
●宮城社長・・・私の経営していた会社の主要取引先の社長。実在する人物だが仮名。

Episode 5

 - 品川出版 福島一郎 -

「へー、社長さんですか。まだお若いのに」

僕の名刺を受け取った人のお決まりのセリフである。
当然僕も、そのお決まりのセリフに対応するすべは心得ている。
しかし、今はいつものその対応ができない。

「君の会社は大村君と、あと、確かアルバイトが1人だっけ?」

顔なじみの宮城社長の思わぬ援軍である。

「あ、はい。そうです」

この程度のセリフなら、考え事をしていてもかろうじて出てくる。

「へー、じゃー僕の会社とおんなじだ」

そう言って差し出された名刺には、次の文字が躍っていた。


     品川出版(株)

     代表取締役 福島一郎

⇒ 第6話へ

2007年02月24日

「篤」が「あつし」に変わるまで(4)

< 第1話 からお読みください >

主要登場人物・団体

●僕・・・この物語の主人公。わたくし、大村あつしのこと。
●福島一郎・・・謎の人物。
●宮城社長・・・私の経営していた会社の主要取引先の社長。実在する人物だが仮名。

Episode 4

 - すべては、彼の一言から始まった -

そして僕は、再び彼との会話に戻る。

「実は、バージョンアップしてからExcelの書籍がまったくないんです。そのために予想以上にかかっちゃったんです」

「え?だけど時々本屋で見かけるけどなー」

「えー、操作的なものはいろいろあるんですけど、マクロ言語になるとさっぱり、というのが現状です」

そして小声で、「『Excelマクロで作る販売管理』なんて本があれば、この規模のシステムなら1ヶ月で作れますよ。僕にそんな本を書かせてくれる出版社があれば、間違いなくベストセラーですよ」

初対面の人にこんな「冗談」を飛ばす僕も「社交的」いや「お調子者」である。
どうやら、名前も知らないこの人とは気が合いそうな予感がする。

「売れるよ」

「え?」

「その本売れるよ。書いてみたら?」

「え?」

「その本書いてみたら?僕が力になりますよ」

すべては、彼のこの一言から始まった。

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2007年02月23日

「篤」が「あつし」に変わるまで(3)

< 第1話 からお読みください >

主要登場人物・団体

●僕・・・この物語の主人公。わたくし、大村あつしのこと。
●福島一郎・・・謎の人物。
●宮城社長・・・私の経営していた会社の主要取引先の社長。実在する人物だが仮名。

Episode 3

 - すべては、彼の一言から始まった -

「ずっと手書きの台帳でやってきたのに、なぜ突然パソコンなんか・・・」

「パソコン導入を決めたのはそちらの社長でしょう。八つ当たりもほどほどにしてくれないか」

声にこそしないが、共に不満を抱えた2人が機械的に話を進めていると、階上の社長室から 2人の人物が降りてきた。
見慣れた1人はその会社の宮城社長。
しかし、その隣の人は初顔だ。

僕は、「お世話になります」と宮城社長に頭を下げ、隣の人には軽く会釈をした。
僕とは何の関係もない人物ではあるが、会釈ぐらいはしておいた方が無難だろう。
すると、その人は来客テーブルに招く宮城社長をよそに僕達、いや、正確には僕のところに歩み寄ってきた。
気が付くと、憂鬱なオペレーターは、彼らにお茶を出すためにすでに給湯室に消えていた。

「こんにちは」

彼は満面の笑みで僕に挨拶を交わす。
年にして40代半ばぐらいであろうか。
よく言えば「社交的」、悪く言えば「お調子者」という印象の人だ。

「へー、Mac使ってるんですかー」
「あれ、これExcelですねー」
「あ、これは凄い。Excelでこんなこともできるですね」

矢継ぎ早に、ひとり言とも僕への質問ともとれることばが飛び出す。

んー。
この人はかなりパソコンに精通している。
MacやExcelに気付くのは造作もないことだが、彼は、僕が「Excelを開発ツールにして」販売管理ソフトを開発したことに見た瞬間気付いている。

これだけ鋭いのだから、次の質問が彼の口から出てきても何の不思議もない。

「これって、Excelのマクロで作ったんですか?」

「えー、そうです。特にExcelは5.0になってマクロ言語が画期的に進歩したんです。だから、こんな事ができるんですよ」

「へー、Excelのマクロはこんなに進歩したんだー」

しばらくの沈黙の後、

「これぐらいの販売管理をExcelで作るのに、日数は結構かかるんですか」

「いやー、予定では2ヶ月を見込んでたんですが、実際には3ヶ月かかっちゃいました。おかげで、今回の仕事は割にあわなかったですよー」

僕は多少意地悪な視線を宮城社長に向ける。

宮城社長は、「かかる日数を正確に見積もるのも仕事のうちだぞ」と笑みを返す。

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2007年02月21日

「篤」が「あつし」に変わるまで(2)

< 第1話 からお読みください >

主要登場人物・団体

●僕・・・この物語の主人公。わたくし、大村あつしのこと。

Episode 2

 - ストレス地獄 -

 実際、キーボード上で四方八方に人差し指を動かしながら文字を探しているその人の姿を見て、

「おいおい、それじゃぁ、ほとんど百人一首の札取りだ」

と心の中でつぶやくほど、僕のストレスは絶頂に達していた。

「もうシステム開発からは身を引こう」
「いや、いっそうのことコンピュータ業界からは足を洗おう」
「以前、数ヶ月間アルバイトでやっていた通訳にでもなるか?真剣に勉強すれば、通訳でも食べていけるだろう」

そう。
当時の僕は、お世辞にも上手とはいえないが、TOEICのスコアで800点。
念のために辞書さえ持参しておけば、限られたテーマであれば十分に通訳が務まるだけの英語力は身に付けていた。

もっとも、英語は単なるツール(道具)。
本当にプロフェッショナルと呼べるだけの通訳になるためには、地理や歴史、経済、文化など、幅広い知識や見識が要求されることもわかってはいた。

それだけに、一瞬でも「通訳になろう」なんて思った自分を自嘲する自分。
それでいて、では何をどうしたらこの「ストレス地獄」から抜け出せるのか、そのソリューション(解決法)を見つけ出せない自分。

「ストレス地獄から抜け出せないストレス」が、さらにストレスに拍車をかける。

今でも「悪循環」という言葉を聞くと、当時の自分を思い出す。

しかし、そんな僕の運命は、その数分後に劇的に変わり始めることになる。

「通訳になろう」なんて、できもしない考えが頭をよぎったその直後から・・・。

⇒ 第3話へ

2007年02月20日

「篤」が「あつし」に変わるまで(1)

主要登場人物・団体

●僕・・・この物語の主人公。わたくし、大村あつしのこと。

Episode 1

 - ストレス地獄 -

「それでは次に、データの変更の方法をご説明します」

「え?、あっ、はいはい。お願いします」

ほらこれだ。
人の説明など何にも聞いちゃいない。
もっとも、この人の気持ちもわからないではないが。

「なぜ突然、私がパソコンなんか覚えなければいけなくなったの?」

そんな不満が頭の中で渦巻いているのだろう。

しかし、はなからやる気のかけらもない人にソフトの説明をしなければならない僕の気持ちもわかって欲しい。
僕の人生哲学は「誰でも最初は初心者」である。
初心者に教えるのは、決して嫌いな方ではない。
むしろ、感謝されたときの喜びは、何にも変えがたいものがある。
そう、元来は、設計やプログラミングより、サポートの方が好きなくらいだった。

ところが、当時は、どの会社に行っても、しぶしぶ僕の説明を受けるパソコン担当者ばかり。
これは単なる偶然ではなく、親会社で僕のソフトの「受け」が非常に良かったため、多数の子会社に一斉に、僕の販売管理システムの導入指令が出されていたのだ。

そしてこれは、それまでは手作業でもそれなりに楽しく仕事をしていた、パソコンに恐怖心さえ感じる子会社の事務員には、はなはだ迷惑な指令だったというわけである。

一度覚えてしまえば自分が楽になるのに、なぜそれをわかろうとしないのか。
いくら「客」だからといって、説明を受けるときにその好戦的な態度はやめてくれないか。
毎日がこのイライラの連続。
これでは、「初心者にやさしく」という僕の人生哲学も吹き飛んでしまう。

⇒ 第2話へ

2007年02月08日

トランプのババ抜きは先攻が有利!?(後編)

先攻:1/6(1巡目)+1/4(2巡目)+1/2(3巡目)=11/12
後攻:1/5(1巡目)+1/3(2巡目)+1/1(3巡目)=23/15

ふむ。
こうして見ても、やはり先攻がババを引く確率の方が小さいですね。
しかし、

「なるほど、ババ抜きは先攻が有利なのか」

と思ったあなた、よーく後攻のババを引く確率を見てください。
「15分の23」では、1より確率が大きくなってしまっています。
言うまでもなく、こんな確率はあり得ません。

すなわち、上の計算式はまったくもって間違いなのです。

では、どこで間違えてしまったのでしょうか?

こうした論理矛盾が発生した理由は、

「自分がカードを引く権利を得る確率を考慮していない」

です。

確かに、後攻は1巡目で5枚のカードから1枚しかないババを引いたら負けです。
この点に関しては確率は「5分の1」です。
しかし、後攻がカードを引くためには、

「先攻がババ以外のカードを引く」

という条件が満たされていなければなりません。

すなわち、この条件を無視した時点で、「5分の1」という数字には何の意味もなくなってしまうのです。

では、「先攻がババ以外のカードを引く」という条件を付け加えた上でもう一度考えてみましょう。

先攻がババ以外のカードを引く確率は「6分の5」です。
さらに、残った5枚のカードからババを引いてしまう確率は「5分の1」。

要するに、後攻が1巡目にババを引いて負ける確率は

「5/6×1/5」

で、先攻と同じく「6分の1」なのです。

これ以上の説明は必要ありませんね。では、正解です。

先攻:1/6(=1巡目)+5/6×4/5×1/4(1/6=2巡目)+5/6×4/5×3/4×2/3×1/2(1/6=3巡目)=3/6=1/2

後攻:5/6×1/5(1/6=1巡目)+5/6×4/5×3/4×1/3(1/6=2巡目)+5/6×4/5×3/4×2/3×1/2×1/1(1/6=3巡目)=3/6=1/2

ということで、ババ抜きで先攻が有利も後攻が不利もありません。
囲碁でもあるまいし、勘で決着が付くような勝負に、どちらが有利もないのはしごく当然のことです。

もし時間があったら、実際に2人で6枚のカードで100回、ババ抜きをしてみてください。

先攻の勝率も後攻の勝率も、50%に近い数字になるはずです。

丁半博打もそうですが、結構、こうした賭け事で、「どちらかが有利」と勘違いしている人は少なくないようですね。

こんな話も、また機会があったら取り上げます!

2007年02月07日

トランプのババ抜きは先攻が有利!?(前編)

先日、このブログで 「ルーレット・パラドックス」 と 「バースデイ・パラドックス」 を取り上げましたが、今回は、結構、多くの人に信じられている

「トランプのババ抜きは先攻が有利」

について検証します。

たとえば、囲碁でしたら、明らかに先攻が有利です。
ですから、「五目半」と言って、先攻は、獲得した陣地のマス目から 5.5 を減算して、不利な後攻との調整を図ります。

では、トランプのババ抜きの場合、先攻と後攻のどちらが有利なのでしょうか?

ここでは、条件は次のとおりとします。

・6枚のカードの中にババが1枚
・2人対戦
・ババを引いた方が負け(当たり前ですね)

さて、最初に先攻がカードを引きます。
このとき、先攻がババを引いて負ける確率は6分の1です。

一方、後攻ですが、先攻が1枚カードを引いた後ですので、カードは5枚しかありません。
したがって、後攻がババを引いて負ける確率は5分の1です。

さて、「6分の1」と「5分の1」では「6分の1」の方が数が小さいですね。
つまり、ババ抜きでは先攻の方がババを引く確率は低く、結果として先攻が有利、ということになります。

ん?
そこのあなた、「フムフム」と納得顔ですね。

ちょ、ちょっと待ってください!

上の説明では、1巡目に2人ともババを引かなかったケースが想定されていません。
ということで、2巡目以降も想定した上で先攻と後攻がそれぞれババを引く確率を求めてみましょう。

先攻:1/6(1巡目)+1/4(2巡目)+1/2(3巡目)=11/12
後攻:1/5(1巡目)+1/3(2巡目)+1/1(3巡目)=23/15

ふむ。
こうして見ても、やはり先攻がババを引く確率の方が小さいですね。

なるほど! やっぱり、ババ抜きは先攻が有利なのか!

後編につづく・・・