「篤」が「あつし」に変わるまで(3)
主要登場人物・団体
●僕・・・この物語の主人公。わたくし、大村あつしのこと。
●福島一郎・・・謎の人物。
●宮城社長・・・私の経営していた会社の主要取引先の社長。実在する人物だが仮名。
Episode 3
- すべては、彼の一言から始まった -
「ずっと手書きの台帳でやってきたのに、なぜ突然パソコンなんか・・・」
「パソコン導入を決めたのはそちらの社長でしょう。八つ当たりもほどほどにしてくれないか」
声にこそしないが、共に不満を抱えた2人が機械的に話を進めていると、階上の社長室から 2人の人物が降りてきた。
見慣れた1人はその会社の宮城社長。
しかし、その隣の人は初顔だ。
僕は、「お世話になります」と宮城社長に頭を下げ、隣の人には軽く会釈をした。
僕とは何の関係もない人物ではあるが、会釈ぐらいはしておいた方が無難だろう。
すると、その人は来客テーブルに招く宮城社長をよそに僕達、いや、正確には僕のところに歩み寄ってきた。
気が付くと、憂鬱なオペレーターは、彼らにお茶を出すためにすでに給湯室に消えていた。
「こんにちは」
彼は満面の笑みで僕に挨拶を交わす。
年にして40代半ばぐらいであろうか。
よく言えば「社交的」、悪く言えば「お調子者」という印象の人だ。
「へー、Mac使ってるんですかー」
「あれ、これExcelですねー」
「あ、これは凄い。Excelでこんなこともできるですね」
矢継ぎ早に、ひとり言とも僕への質問ともとれることばが飛び出す。
んー。
この人はかなりパソコンに精通している。
MacやExcelに気付くのは造作もないことだが、彼は、僕が「Excelを開発ツールにして」販売管理ソフトを開発したことに見た瞬間気付いている。
これだけ鋭いのだから、次の質問が彼の口から出てきても何の不思議もない。
「これって、Excelのマクロで作ったんですか?」
「えー、そうです。特にExcelは5.0になってマクロ言語が画期的に進歩したんです。だから、こんな事ができるんですよ」
「へー、Excelのマクロはこんなに進歩したんだー」
しばらくの沈黙の後、
「これぐらいの販売管理をExcelで作るのに、日数は結構かかるんですか」
「いやー、予定では2ヶ月を見込んでたんですが、実際には3ヶ月かかっちゃいました。おかげで、今回の仕事は割にあわなかったですよー」
僕は多少意地悪な視線を宮城社長に向ける。
宮城社長は、「かかる日数を正確に見積もるのも仕事のうちだぞ」と笑みを返す。
娘が学校へ行った! 奇跡の作品、「クワガタと少年」 現在、静かに、しかし力強く人から人へと伝えられている作品です。 みなさまにも読んでいただきたい心温まる掌編です(掌編=超短編) |
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