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「篤」が「あつし」に変わるまで(12)

< 第1話 からお読みください >

主要登場人物・団体

●僕・・・この物語の主人公。わたくし、大村あつしのこと。
●福島一郎・・・品川出版(株)の社長。実在する人物だが仮名。
●品川出版(株)・・・在京の出版社。実在する会社だが仮名。

Episode 12

- 噛み合わない会話 -

こうなると、さすがに僕も聞き返さざるを得なかった。

「あのー、お渡しした原稿は未完成なんですが」

「え?未完成なの?」
途端に、福島社長の声が弾んだのがわかる。

「それじゃ、まずいよ。それじゃ持っていけないよ」

「いえ、しかし、仮に別のパート、たとえば『売上入力』を『入金入力』に差し替えて30ページ完成させたところで、それは全体の一部に過ぎません。素人考えですが、本全体が完成しなければ印刷所には持っていけないんじゃないでしょうか?」

「んー、そうだ。じゃー、こうしよう。一層のこと、本全体を完成させてよ。時間をかけてもいいから、じっくりといいものを書いてよ」

「でも、全体を書き上げてから合否発表では、私も仕事がありますし、リスクが大きすぎると思うんですが。最悪の場合、数ヶ月を棒に振ることになりかねません」

「いや、もうテストはパスしたと思ってください。本が完成すれば、それで合格!」

実は、この会話、まったく歯車がかみ合っていない。
福島社長が僕の原稿を持っていこうとした場所は、印刷所ではない。
冷静に考えれば、編集も済んでいない原稿を印刷所に持ち込むわけがない。
また、なぜ福島社長は、僕の原稿が届いた時に、思わず残念がった、いや、むしろ迷惑がったのか・・・

その謎解きは、またのお話。

⇒ 第13話へ



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