< 第1話 からお読みください >
主要登場人物・団体
●僕・・・この物語の主人公。わたくし、大村あつしのこと。
●エーアイ出版・・・僕がデビューを果たした出版社。もちろん実在する。
Episode 31
- 悔し涙 -
「いや、2~3日で結論は出ますよ。そうしたら、すぐに連絡します」
しかし、1週間待っても連絡が来ない。
業を煮やした僕が電話してみると・・・。
「すみません。あなたの企画、会議にかけるの忘れちゃいました。来週の会議にかけますから」
なんたることだ。
人間のすることだ。
忘れるのは仕方ないと思う。
しかし、物は言いようだろう。
「1回の会議では結論が出ませんでした。来週の会議でもう一度議題にあげますから」
嘘でも、このような伝え方をしてくれるのが「優しさ」ではあるまいか。
そして、信じがたい話だが、このやり取りが繰り返されること3回。
3週間以上待たされた挙句、この編集者は引き継ぎもせずにその出版社を辞職してしまった。
再度、一から別の編集者に説明を試みたが、
「うちは持ち込み企画はお断りしてますので。持ち込みで当たった試しがありませんから」
「でも、原稿は完成しているんですよ。それをお読みいただければ判断材料になるかと思うのですが・・・」
「いえいえ。『持ち込み企画』はあくまでも『持ち込み企画』。それに、こう言っては失礼ですが、完成した原稿を私が見てしまうと、ますます出版の可能性は低くなると思いますよ」
このとき、ついに僕は涙した。
原稿が完成してからすでに5ヶ月。
Excel VBAも徐々に世間の注目を集め始め、次々といろいろな書籍が世に出回り始めていた。
当然、僕の焦りも絶頂に達していた。
しかし、「コネがない」「実績がない」「どこの馬の骨かもわからない」。
この「ないないづくし」の三重苦を打破できない自分への苛立ちとあまりに無礼な編集者の対応。
子供の頃、骨折したときに痛くて泣いたことはあるが、そのとき以来の涙であろう。
また、生まれて初めての「悔し涙」であった。
そして、それまでは「本が出版されたら驚かせてやろう」とじっと自分の中にしまい込んでいた事の経緯や複雑な心境を初めていろいろな友人にを伝えることにした。
「話す」ことで、心がいくばくか軽くなると思ったのだ。
しかし、友人、正確には「友人だと思っていた知人」も含むが、彼らの反応は、それは実に様々であった。
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