「篤」が「あつし」に変わるまで(34)
主要登場人物・団体
●僕・・・この物語の主人公。わたくし、大村あつしのこと。
●エーアイ出版・・・僕がデビューを果たした出版社。もちろん実在する。
Episode 34
- 二重の幸運 -
今から話すことは、信じがたい、しかし紛れもない事実である。
もっとも、この裏事情を知らされたのは、エーアイ出版から本が出版された後、正確には、本の売れ行きがすこぶる好調で、2冊目の執筆依頼が来たときであったが・・・
僕の持ち込んだ企画書と原稿は、1週間、編集長の机に放置されていた。
持ち込まれてすぐに「出版不可」では、あまりに僕に対して気の毒だと思ったのだろう。
補足しておくと、持ち込んだときには編集長は不在であった。
僕は、決断する立場にないアルバイトに、事情を簡単に説明して手渡してきただけである。
かと言って、エーアイ出版の長い社歴の中で、過去に著作物のない「素人」の持ち込み企画を出版したことは、編集長の記憶では一度もないそうだ。
すなわち、遅かれ早かれ僕の元には「出版不可」の連絡が入り、企画書と原稿はゴミ箱行きの運命だったわけだ。
ちなみに「出版不可」の連絡さえしてくれない出版社もいくつもあった。
そうした意味では、「検討した上での結論」という、僕が納得のいく状況を1週間という空白期間を置くことで作り上げ、その上で連絡を下さる手はずだったエーアイ出版は、非常に良心的であると今でも心の底から感謝している。
僕は、原稿を持ち込んだ日に、エーアイ出版の編集部のロッカーや壁にジャッキー・チェンのポスターが何枚も貼られていることには気付いていた。
しかし、もちろん、誰が貼ったのかまでは知る由もない。
一方、そのポスターを貼った張本人は、収穫のなかった企画会議の後で、アルバイトから渡された自分の机の上の出版する予定のない「素人」の持ち込み企画書にふと目を落とした。
「そろそろ彼には連絡を差し上げなければ気の毒だ」
しかし、その目に最初に飛び込んできたのは、
『Excelマクロで作る販売管理』
という原稿の仮題ではなく、企画書を書いた人物が経営する会社名であった。
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「大村あつしとマイミクになってもいいよ♪」という方は・・・
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