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「篤」が「あつし」に変わるまで(37)

< 第1話 からお読みください >

主要登場人物・団体

●僕・・・この物語の主人公。わたくし、大村あつしのこと。
●エーアイ出版・・・僕がデビューを果たした出版社。もちろん実在する。

Episode 37

- 篤をあつしに変えたとき -

しかし、僕にはもう1つ、親から授かった大切な贈り物、そう「本名」というものが当然ある。

このときの僕は、その後自分が本を量産するプロのライターになろうとは想像だにしていなかった。
自分の人生で最初で最後の著作である。
そう思っていた。
だからこそ、悩みに悩んだ。
さて、どうするべきか。

一度きりの思い出なのだから本名にするべきだ、と食事を口に運びながら友人は主張する。

「いや、なにかこう、ぐっとくるような、何と言うか、まぁ、こう、覚えやすくて、それでいて、丸みのあるというか柔らかみのあるというか、そんなペンネームがいいが、確かに本名も捨てがたい」

僕の主張は支離滅裂だ。

待てよ・・・.
「大村」は誰でも読める平易な漢字だし、丸みはないが少なくとも覚えにくいことはない。
それに、苗字も名前も丸かったら、かえって逆効果のような気がする。

苗字くらいは多少角張っているほうがいいだろう。
そう思った瞬間、ペンネームの苗字は「大村」に決定した。
この点には迷いはなかった。

では、名前はどうする?
本名の「篤」は、読めない字ではないが、「大村」のような覚えやすさがない。
要するに、画数が多すぎる、僕はそう思った。

それに、丸みという点でも不合格だ。
直線ばかりで、「大村」以上に威張ってるではないか。

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