
しず:山ちゃん、さっきからなに読んでんの?
山里:嫌だな~、しずちゃん。表紙の文字が読めないの? これだよ! これ! 昨年の本なのに、今もベストセラー街道ばく進中の小説だよ。『エブリ リトル シング』
しず:(パチン!)
山里:痛いなぁ! なに、いきなり殴ってんだよ
しず:山ちゃん、嘘はいかんよ
山里:嘘ついたってしょうがないだろ。見てご覧。『エブリ リトル シング』って書いてあるだろう
しず:あのな、山ちゃん。私、タイトルのこと言うてるんちゃうんねん。ベストセラー街道ばく進中、って嘘やろ
山里:ま、まあ、ばく進中はちょっと大袈裟かな
しず:ベストセラー、なんて名前の街道、見たことも聞いたこともない
山里:嘘ってそっちかよ! 例えだよ例え
しず:ちなみに、どれくらい売れてんの?
山里:うーん、これくらいかな
しず:15億冊! どひゃ!
山里:しずちゃん、日本の人口どころか中国の人口も超えちゃってるよ~
しず:冗談や、冗談。でも、15冊売れるって凄いことや
山里:しずちゃん、作者が聞いたら怒るよ
しず:で、面白いの、それ?
山里:それが、最高に面白いんだよ
しず:(パチン!)また、嘘や
山里:痛いなぁ! 嘘じゃないよ
しず:さっきから見てるけど、山ちゃん、ちっとも笑うてないやん
山里:しずちゃん、面白い、の意味が違うんだよ
しず:でも、どんなに面白くても、あんたの顔には負けるやろ
山里:ハハハー。しずちゃん、ボク、愉快で笑ってるんじゃないよ~
しず:そんなに面白いなら、私にもちょっと読ませて。………。ハハハハ!
山里:しずちゃん、そこ、笑うとこじゃないだろう! なに、腹を抱えてるんだよ
しず:………。ウ、ウ、グスン。ウワーン!
山里:おいおい。今度は泣いてるの? しずちゃんも忙しいね。あ! 第一話の「クワガタと少年」読んだな! 確かに、出だしでいきなり泣かされちゃうんだよね、この本。なんせ、その「クワガタと少年」を読んで学校へ行くようになった不登校児もいるくらいだから・・・、って、なに、著者プロフィールを見て泣いてんだよ! 作者に失礼だろう!
しず:でも、山ちゃん。この作者、著者近影の写真がないよ。よほどブサイクなんだと思ったら………。ウ、ウ、グスン。ウワーン! 泣ける、泣ける。やっぱりここが一番泣ける!
山里:それは、作者が小説の世界観を壊したくなかったから、あえて載せなかったんじゃないの?
しず:まあ、確かに、こんな顔でもテレビに出とるやつもおるんだから、たとえブサイクでも作者にはたくましく生きて欲しいわ
山里:しずちゃん。そこでボクを指さすのやめてくれるかな~
しず:でも、なかなかいいこと書いてるやないの、こいつ
山里:こいつ、って、いつからしずちゃん、この作者のマブダチになったの
しず:・・・。うーん、この第三話、『アフター・ザ・プロム』ってええ話やな。え? なになに? 「なあ、清明、わかるか。お前がそうして無駄に過ごした今日は、昨日死んだ人が痛切に生きたかった明日なんだ」? この野球部の監督、当たり前のこと言うてるで。これで印税もらってるなんて、この作者、犯罪者や
山里:しずちゃん。作者、真剣に怒るよ
しず:でも、私、この本、かなり気に入ったわ。心が豊かになって元気が出てきた。カバーデザインは女性向けっぽいけど、確かに、私のような色香プンプンの女性が感じる何かがあるわ、この物語
山里:いや、いや、しずちゃん。これ、男にもかなり売れてるんだよ。実際、俺なんて号泣だよ
しず:へえ。男女問わずに人気あんの。じゃあ、15冊、売れたのも大納得や
山里:しずちゃん。今ごろ、作者、泣いてるよ。言っておくけど、嬉し泣きじゃないよ
しず:それより、山ちゃん。さっきこの本を読んでるとき、いつになくお洒落やったやん。メガネのふちを唇で挟んだりして
山里:ヤダな~、気付いちゃったの、しずちゃん
しず:そんなに、おなか、すいてたん?
山里:しずちゃん、普通に怒るよ
しず:チュッパチャップスでもこうて来てやろうか
山里:しずちゃん、ぶっていいかな? げんこで
しず:でも、チュッパチャップスで我慢するんやで。間違ごうても私の唇は吸わさへんで
山里:ハハハー、しずちゃん、ちょっと、吐いてもいいかな
しず:でもなー、山ちゃん。私、どうしてもわからないんやけど
山里:え? 何だろう?
しず:山ちゃん、メガネをかけずによくこの本が読めたな
山里:………
しず:それに、本、逆さまだったし
山里:だから、しずちゃん、最初に表紙の文字が読めなかったのか。ハハハーって、その時点で突っ込んで欲しかったな~
しず:そのわりには、この本についてやけに詳しいやん。あ! あんた、山ちゃんやないやろ! ちょっと、その仮面をはいでみ
山里:し、しずちゃん。スパイ大作戦じゃないんだから。これは地顔。か、か、仮面なんかじゃ…。ちょ、ちょっと、しずちゃん、なにするんだよ!
しず:ほら、剥げた。って、誰やあんた!

しず:あ、ひょっとしてあんた、この本の作者やろ。どうりで詳しいわけや
大○:し、失礼!
しず:ちょっと、どこ行くねん。………。まんまと逃げよった。しかし、こんな気色の悪い山ちゃんのお面までかぶって。ほなら、そのチャレンジ精神に敬意を表して、私がアマゾンへのリンクを貼ってやるわ、ほれ
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※この物語はフィクションであり、登場人物は架空のものです。実物の南海キャンディーズは こちら です※