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ミステリーの大傑作『イニシエーション・ラブ』

今日は本のご紹介です。

とにかく、何も言いませんので、大傑作ミステリー、『イニシエーション・ラブ』を読んでみてください。
(あ、35歳より若い人は楽しめないかもしれません。
当時の世相がわからないので、伏線に気付きようがないので)

それから、レビューは絶対に読んじゃダメですよ。
ネタバラシのオンパレードですから(^_^;)

⇒ 単行本
⇒ 文庫

つまらなかった方は、「大村の嘘つき!」でも「大村、死んじまえ!」でも「大村、金返せ!」でも、自由にコメント欄に書いてください(笑)

批判は甘んじて受けます(*^^*)

以下、『イニシエーション・ラブ』のボクの感想ですが、どうしてもネタバラシになってしまうので、読まないでください(爆)
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さて、この『イニシエーション・ラブ』ですが、女の業の深さ、したたかさを描いた、最上級のミステリーです。

しかし、本の帯には「ミステリー」と書いてあるのに、読んでいると、はっきり言って凡庸な恋愛小説にしか思えません。

別に、誰かが死ぬわけでなし、女性がレイプされるわけでなし、ドラッグをするわけでなし、本当に、ぶっちゃっけ、「よくここまで盛り上がらない恋愛小説が世に出たよな」と思わざるを得ません。

普通の大学生が普通の歯科衛生士の年下の女の子に恋をし、無事に恋が成就する。
緊迫感ゼロです。
ほとんどの人が、この程度の経験はしているはずです。

また、遠距離恋愛の切なさも描かれていますが、ボクも遠恋の経験がありますので、「うん。確かにこんな気持ちになるよね」でおしまいです。

しかし、物語の最後の2行、厳密にはその一文の中に出てくる二文字。
この二文字だけで、凡庸な恋愛小説が、超極上のミステリーになります。

少女にしか見えなかった絵が、突然、老婆に見える

有名なだまし絵がありますが、物語の最後から2行目を読んだ瞬間、まさしくこれと同じ現象が起きます。
そして、背筋が凍りつきます。
さらには、自分が読んできたストーリーが「少女」ではなく「老婆」であったことに気づき、結局、もう一度読む羽目になります。

はっきり言って、かなりの人が2回以上読むことになるでしょう。

そして、物語のほぼすべて、登場人物のセリフ、行動、ガジェット、ありとあらゆるものが伏線だったことに感嘆させられます。

たとえば、

「私、便秘だったの」

というヒロインのなんでもないセリフが、二度目に読むときには、背筋も凍る「怖いセリフ」になるわけです。

もっと言えば、本書の文体はかなり軽いです。

しかし、すでに、そこから仕掛けが始まっているのです。

読み進めていると、確かに不自然な箇所はあります。

また、仕掛けに気付く人のタイミングは人それぞれのようです。
ボクは、終わりから10ページくらいのある文章で仕掛けに気づき、思わず「マジかよ、この話」と声に出してしまいました。

ほとんどの人が最後の2行目まで気付かないようですが、中には、ボクよりももっと早くに仕掛けに気付く人もいるでしょう。

では、なぜ、ボクは「不自然だ」と思いながらも、最後の10ページ目まで仕掛けに気付かなかったのか。

それは、文章があまりに軽いために、「まあ、作者のミスかな」で、その不自然さを許容してしまうのです。

そうなんです。
作者は、そこまで計算しつくしてこの物語をかいているのです。

ですから、「この作者、文章、イマイチ」とか「設定がぶれてるけど、まあ軽い恋愛小説だし」と思った瞬間に、すでに作者の罠にはまっていることになります。

なにせ、これだけの傑作ですから、インターネットには解説ページまであります(笑)

⇒ 『イニシエーション・ラブ』解説ページ

非常によく考察されているので、二回くらい本を読んだ後に、このページを訪ねると、より一層『イニシエーション・ラブ』が楽しめると思います。

一つ、(以下、思いっきりネタばれ)

こんなにつぶさに考察しているのに、上記ページに登場しない箇所があります。

ボクが「不自然だ」と思い続けた箇所です(かと言って、仕掛けに気付いたわけではないのですが)

それは、主人公とヒロインのマユが初めて結ばれるシーンです。
作者は、このシーンをもの凄く丁寧に描いています。
(それも伏線だったと最後に気付くわけですが)

で、主人公は童貞、マユはバージンです。
となれば、当然ですが、「出血」の問題があります。
もちろん、初体験で必ず出血するとは限りませんが、出血しようとしなかろうと、これだけ細部まで二人の性行為を描き込んでいながら、その記述がないのはなんとも不自然です。

でも、上述のとおり、「この物語、なんか軽いし、まあ、作者もそこまで気が回らなかったんだろう」と、この「不自然」を「許容」してしまうのです。

その瞬間に読者の「負け」です。

ますます、作者の罠にはまっていきます。

今まで、ボクがもし、「一人だけ作家に会わせてあげる」といわれたら、多分、東野圭吾先生、宮部みゆき先生、村上龍先生、伊坂幸太郎先生、乙一先生、あたりの名前を挙げていたと思いますが、『イニシエーション・ラブ』を読んで、乾くるみ先生が「一番会いたい作家」になりました。

もう一つ、蛇足ですが、この小説の特徴は、舞台となっている静岡市のローカルな地名が、なんの説明もなく、「日本人なら知っていて当然でしょう」みたいに登場することです。

ボクも静岡大学で、しかも、作者の乾先生は、ボクよりも3、4歳上らしいので、もう、読んでいて爆笑でした。

みんなは曲金(まがりかね)で降りたが、ボクは子鹿(おしか)まで行った
静波への中間地点の焼津で一息ついた

みたいな、知らない人には「???」な地名のオンパレードです。

そもそも登場人物の名前が鈴木、望月、渡辺など、全国的にも多いとはいえ、静岡県では苗字では呼んでもらえない名前です。あまりに多いので、静岡県民は彼らを下の名前で呼びます。
この時点で、静岡市民はクスリとすると思います。

さらに

カネボウ通り(懐かしい。よく原付で走った!)
丸子(まりこ)(ここはトロロとお化けトンネルで有名)
流通通り
柚木(ゆのき)(多くの静岡市民がここで自動車免許を取ります)
久能街道(150号線。イチゴ狩りで有名。繁忙期には大渋滞)
呉服町通り(静岡市の歓楽街)
さらに「古庄(ふるしょう)」や「北街道(旧国道一号線より少し北を走っている旧清水市と静岡市を結ぶ裏道)」まで出てきた日には、もう静岡市民だったボクは大爆笑です。

お店でも
・新静岡センター屋上のビアガーデン
・戸田書店
・谷島屋書店
・吉見書店
・トシ・ゴトー
・シシリア(懐かしすぎて涙が出ます(笑)
・DADA
・アピア
・あさくま(よく、ご飯、お代わりしたな)

これだけ挙げても、多分、全体の3分の1くらいじゃないでしょうか。

まじめな話、静岡市の人が書いた、静岡市限定の自費出版の本かと思いました。

さらには、「ジョグ」なんて単語が当たり前に出てくるのですが、実はこれは「原付」の名前で、80年代半ばには圧倒的な人気を誇りました。

そして、静大は静岡市でも久能海岸近くの山の中腹にあり、原付所有率は全国の大学でも一番と言われていたのですが、その静大生のほとんどがジョグに乗っていました。

ボクの友だちも全員ジョグです
天邪鬼なボクはキュートという、イマイチパワー不足の感が否めない原付で、よく、ジョグを借りては、キュートの感覚で発進しては、前輪を持ち上げてしまい、こけていたものです。

まあ、これだけでも、静岡市民、そして、静大生には必読書ですね(笑)

いずれにせよ、繰り返します。

絶対に二回読まずにはいられない、最後の二行ですべてがひっくり返る、ミステリーの概念までをもひっくり返す大傑作。

それが『イニシエーション・ラブ』なのです!

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